【はじめに】「なんで何も言わないの?」—異文化の衝突は、ある日突然に
留学生活にも少し慣れてきた頃、ホストファミリーとの些細なやりとりの中で、私に突然こう言いました。
“Why didn’t you say anything?”
その時私は、何も言えませんでした。
だって、言わない方がいいと思っていたから。空気を読んで、そっとしておくのが正解だと思ったから。
でも、その沈黙が、ホストファミリーには「無関心」「無責任」と受け取られていたのです。
あの瞬間の温度差が、私にとって「日本と海外の文化の違い」を肌で感じた最初の瞬間でした。
このブログでは、“察することが当たり前”の日本文化が、海外では通じなかった体験と、
そこから私がどう乗り越えてきたのか、リアルに綴っていきます。
【日本の常識】「察する」「言わない優しさ」が求められる社会
日本で育った私たちは、知らず知らずのうちに察することを身につけています。
- 空気を読んで動く
- 本音と建前を使い分ける
- 言葉にしなくても気づくことが美徳
それはある意味、高いコミュニケーションスキルです。
ただ、それが「前提になっている」世界から、まったく違う価値観の中に飛び込むと——
私のように、戸惑うことになります。
【海外のリアル】“言わなきゃ伝わらない”世界

私が留学していたニュージーランドでは、「言葉にすること」が信頼の証とされていました。
いくつかの体験を通して、その違いを痛感した出来事を紹介します。
1. グループワークで「存在していない人」になった
ディスカッション中、周りの会話のテンポが早くて、なかなか話に入れずに黙っていた私。
誰も私に話を振らないまま、話し合いは進んでいきました。
後でメンバーの一人にこう言われたんです。
“I didn’t even realize you were there.”(あなたここにいたんだ、気づかなかったよ)
ああ、黙っていたら、いないのと同じなんだ。その一言が刺さりました。
2. ホストファミリーとのすれ違い
ある日、家の雰囲気がなんとなくぎくしゃくしていると感じて、
私は「話しかけない方がいいかな」と思って何も言わずに部屋にこもりました。
数日後、ホストマザーから真剣な表情でこう言われました。
“Are you upset with us? You’ve been so distant.”(なにか怒ってるの?)
気を遣ったつもりが、距離を置いた=怒っていると思われてしまったんです。
【そこで気づいた】“伝える力”はスキルだった
最初は「文化の違いだから仕方ない」と思っていました。
でも、ある日こう思ったんです。
ここでは、「伝えること」が生きていく上でのサバイバルスキルなんだ、と。
✔︎ 小さなひとことから始めてみた
- “I think…”(私はこう思う)
- “I’m not sure, but maybe…”(自信ないけど、もしかすると…)
英語の完璧さよりも、なにかを伝え、自分の存在を示すことが大事でした。
✔︎ “断る”のは失礼じゃなかった
- “I’d love to, but I already have plans.”
- “I wish I could help, but I can’t today.”
むしろ、自分の限界やスケジュールを伝えることで、相手からの信頼も増えました。
✔︎ 感情も、ちゃんと伝える練習を
- 「ちょっと疲れてるから、今日は静かに過ごしたい」
- 「混乱してて、今うまく言えないけど、モヤモヤしてる」
“何も言わずに察してほしい”から、“言葉にして共有する”ことへ。
少しずつ、自分を伝えることができるようになっていきました。
【まとめ】「察しない=冷たい」じゃない。「伝えない=届かない」だけだった
日本では、察することが優しさでした。
でも、世界の多くの場所では、言葉にすることこそが思いやりです。
私が「何も言わなかった」ことは、彼らにとって「何も感じていなかった」と同じだった。
でも本当は、怖かったり、気を遣っていたり、相手を思っての沈黙だったのです。
それを、言葉にしないと伝わらない。
逆に言えば、言葉にすれば伝わるのです。
【この記事を読んでくれたあなたへ】
- これから留学する人
- 海外での生活に不安を感じている人
- 自分の気持ちをうまく言葉にできない人
もし、あなたが「察してほしい」と願っているなら——
勇気を出して、少しだけ言葉にしてみてください。
伝えることは、甘えじゃありません。
伝えることは、あなたを大切にすることです。
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